2026年2月27日の夕方、マンガワン編集部からようやく公式声明が出ました。
山本章一氏と「一路一」が同一人物であると認め、謝罪の言葉を並べた声明。
判決から実に7日間の沈黙を経て、ようやく出てきた「答え」です。
ところが、この声明が火に油を注ぐ結果になりました。
発表からわずか数時間で、漫画家たちが次々と「マンガワンでの配信を停止する」「作品を引き上げる」と宣言。
Xでは関連投稿が数万件に達し、#マンガワン声明 がトレンド入りする事態に発展しています。
なぜ謝罪したのに、ここまで怒りが広がったのか。
声明の何がまずかったのか、漫画家たちは何に怒っているのか、そしてマンガワンは今後どうなるのか。
この記事では、声明の問題点からボイコットの全貌まで、一気に整理していきます。
目次
マンガワン声明で何が発表されたのか
まず、声明の中身を確認しておきます。
2月27日17時頃に発表されたマンガワン編集部の声明は、おおまかに以下の内容でした。
『常人仮面』の原作者「一路一」が山本章一氏と同一人物であることを認めた。
被害者への謝罪の言葉を述べた。
作品の電子版配信停止・単行本出荷停止を発表した。
作家起用時の確認体制に問題があったと認め、再発防止に取り組むと表明した。
判決から7日間沈黙を続けた後の、ようやくの公式対応。
ネット上では「やっと出たか」という反応がまず広がりました。
しかし、声明の全文を読んだ人々の反応は、すぐに失望へと変わっていきます。
声明全体が約300文字程度と極端に短く、中身を精査すればするほど「足りない」部分が目立ったからです。
では、具体的に何が問題だったのか。
ネットで指摘されている批判ポイントを、一つずつ見ていきましょう。
マンガワン声明が「不誠実」と叩かれた5つの理由
声明の発表直後からXや5ch、はてなで噴き出した批判は、大きく5つのポイントに集約されます。
どれも「言うべきことを言っていない」「やるべきことをやっていない」という不満で、読者だけでなくクリエイターからも厳しい声が上がっています。
①声明が短すぎる・具体策がゼロ
最も多かった批判が「とにかく中身が薄い」というもの。
約300文字という声明の短さに、多くの人が唖然としました。
被害者への謝罪は書かれていますが、具体的な補償や支援策については一切記載なし。
「再発防止に取り組んでまいります」という一文があるだけで、何をどう取り組むのかがまったく見えません。
Xでは「300文字で終わり?被害者への補償は?再発防止策は『取り組んでまいります』だけ?」と数千いいねを集めた投稿が拡散。
はてな匿名ダイアリーでも「セクシー田中さん事件の時も同じだった。謝罪文だけ出して何もしないパターン」という指摘が上がっています。
7日間の沈黙の末にこれだけの分量しか出せなかったことが、逆に「本気で向き合う気がない」という印象を強めてしまったのでしょう。
正直、これだけ社会的注目を集めている事件で300文字は、企業の危機対応として異例の薄さと言わざるを得ません。
②成田卓哉編集者の名前が一切出てこない
声明で山本章一氏の名前は出てきたのに、担当編集者・成田卓哉氏については一文字も触れられていない。
これがネット上で最も大きな怒りを呼んだポイントかもしれません。
成田氏といえば、堕天作戦も常人仮面も担当した編集者。
2021年5月には被害者・山本氏との3者LINEグループを作って150万円の示談を提案していたとされ、2025年11月には裁判進行中にもかかわらず山本氏とランチに行ってトリュフパスタの写真をXに投稿していた人物です。
この人の名前が声明に一度も出てこないというのは、ネットから見れば「守っている」としか映りません。
Xでは「成田卓哉の名前1回も出てこない。ランチ写真まで上げてたのに、なぜ守る?」という投稿がトレンド入り級の拡散を見せました。
成田氏が出演予定だったBSテレ東『漫画クリスタル』の延期も「組織ぐるみで守ってる証拠」と受け取られています。
声明が成田氏の関与に触れなかったことで、「編集者個人の暴走ではなく、組織として隠した」という疑惑がかえって強まってしまった格好です。
③作画者・鶴吉繪理氏へのケアが見えない
声明では「鶴吉繪理先生」と名前こそ出したものの、具体的な補償や今後のサポートについては何も書かれていませんでした。
鶴吉氏は2月26日に「とても、ショックだ………酷い、悲しい…」とXに投稿し、閲覧92万超という凄まじい反響を呼んだ人物です。
事件について何も知らされないまま、性加害が疑われる原作者とタッグを組まされていた可能性が高い。
最終巻が発売から1週間で電子版購入不可になるという異常事態は、作画者としてのキャリアに直接的なダメージを与えています。
それにもかかわらず、声明でのフォローはほぼゼロ。
Xでは「名前だけ出して何もしない。女性漫画家を性加害者と組ませておいてこれか」という漫画家のRT付き投稿が急拡散しました。
セクシー田中さん事件で芦原妃名子氏が追い詰められた記憶がまだ生々しい中、「また同じパターンでは」という危機感がクリエイター層の間に広がっています。
名前を出すなら、せめて具体的な補償の方針くらいは示すべきだったのではないでしょうか。
④再発防止策が「取り組んでまいります」だけ
声明には「作家起用時の確認体制に問題があったため、再発防止に取り組んでまいります」と書かれていました。
しかし、その「取り組み」の中身が一切示されていません。
犯罪歴のチェックを義務化するのか。
外部監査を導入するのか。
編集者への研修を強化するのか。
何一つ具体的なことが書かれていないのです。
Xでは「再発防止って何するの?具体策ゼロじゃ意味ない」「『取り組んでまいります』って、結局何もしないってことだろ」という声が溢れました。
はてなでは「確認体制に問題があった→じゃあ今までチェックしてなかったってこと?最初からノーチェックだったんでしょ」という鋭い指摘も。
「再発防止」という言葉は、具体策がセットでなければただの免罪符にしかなりません。
7日間も時間があったのに、なぜ一つも具体策を示せなかったのか。
この点が「口だけ謝罪」という印象を決定づけたように感じます。
⑤作品対応が中途半端で読者も置き去り
声明では電子版配信停止と単行本出荷停止が発表されましたが、実態は中途半端な対応でした。
紙版の在庫販売は継続中で、書店やオンラインストアではまだ購入可能な状態。
Xでは「電子版だけ切って紙版は在庫限り販売。姑息すぎる」「読者騙して売った分の返金は?」という声が相次いでいます。
すでに購入済みの電子書籍が読めなくなった読者への補償についても、声明では一切触れられていません。
さらに深刻なのが、マンガワンオリジナル連載作家への影響です。
契約上、簡単に他媒体へ移籍できない作家たちが「売上が減るのは確実なのに動けない」という板挟み状態に置かれている。
5chでは「オリジナル連載作家はどうなるの?契約あるから動けないのに、売上減ったら誰が責任取る?」という切実な声が上がっていました。
被害者以外にも被害者を増やしている。
声明が出たことで、その構図がより鮮明になってしまったのは皮肉な話です。
漫画家たちのボイコット声明まとめ
声明の発表から数時間で、漫画家・クリエイターたちのボイコット宣言が一気に噴き出しました。
その内容は大きく3つのタイプに分かれています。
声明への失望がどれほど深かったかが、これらの反応から伝わってきます。
①配信停止・引き上げを決断した漫画家たち
最も目立ったのが、マンガワンでの配信停止や作品の全面引き上げを宣言した漫画家たちです。
環方このみ氏は「マンガワンの『ねこ、はじめました』につきまして、来週3/6更新予定でしたが、現在配信の停止を申し入れております」と投稿。
「あくまでも私個人の感情に基づく個人的な判断です」と前置きしつつも、声明への明確なNOを突きつけました。
読者からは「決断を支持し、尊敬します」「英断です」という反応が殺到しています。
白石ユキ氏も「明日更新予定のきゅーさきゅ最新話ですが、色々と思うところがあり配信を中止させていただくことになりました」と発表。
マンガワンオリジナル作品であるにもかかわらず中止を選んだのは、「色々と思うところ」という言葉が示すように、声明の不誠実さが創作のモチベーションを根底から揺るがしたからでしょう。
さらに大きなインパクトを与えたのが、こざき亜衣氏の声明です。
「私の著作をマンガワンから全面的に引上げたい旨を伝え、了承いただきました」と、『セシルの女王』『あさひなぐ』といった著名作品の完全撤退を宣言。
私の著作をマンガワンから全面的に引上げたい旨を伝え、了承いただきました。タイムラグあるかもしれませんが、じきに消えます。セシルの女王やあさひなぐはビッコミや他のアプリで読めますので、今後はそちらをご利用ください。当該媒体で読んでくださっていた方おられましたら申し訳ありません。
— こざき亜衣🌹セシルの女王⑩👸 (@kozaki_ai) February 27, 2026
「当該媒体で読んでくださっていた方おられましたら申し訳ありません」と読者への配慮を示しつつも、倫理を優先する姿勢は多くのクリエイターの共感を呼びました。
竹良実氏の声明は、その丁寧さと配慮の深さで際立っていました。
「マンガワンが何事もなかったように続いていくことに協力できない思いがあり」と中止の理由を明確にしつつ、「私がこの判断を選べたのはやはり他の発表場所があるから」とオリジナル作家への気遣いも忘れない。
「掲載を続ける判断をした作家さん達にも様々な怒りや思いがあるはずで、それを尊重したい」という一文には、業界全体を見渡す視野の広さが感じられます。
②小学館との決別を宣言した漫画家たち
配信停止にとどまらず、小学館グループ全体との関係を断つと宣言した漫画家もいました。
百合太郎氏の「スマンずっと静観して公式声明待ってたんですがこれはありえない。今後小学館系列のレーベルは連絡してこないでください」という投稿は、その直球さで大きな反響を呼びました。
スマンずっと静観して公式声明待ってたんですがこれはありえない。今後小学館系列のレーベルは連絡してこないでください。
— 百合太郎📛カヤコワアニメ1月 (@yuritaro_0316) February 27, 2026
「ずっと静観して公式声明待ってた」という言葉が象徴するように、クリエイターたちは声明に期待をかけていたのです。
その期待が完全に裏切られた瞬間の怒りが、「連絡してこないでください」に凝縮されています。
瑞光@黄金饅頭氏も「声明読んで即決。小学館絡みの仕事は今後一切受けない」と即断。
「セクシー田中さん事件の時も同じだったけど、原作者軽視・隠蔽体質が変わらないなら、作家として関われない」と、過去の事件とのつながりを明確に指摘しています。
よずみ氏は「マンガワン公式声明を見ましたが、不誠実さが極まりない。作家として、二度とマンガワンに作品を載せないことを宣言します」と投稿し、鶴吉氏の投稿を引用しながら「業界の闘を痛感しました」と表明。
いいね1500超、リポスト400超という大きな反応が集まりました。
こうした「決別宣言」は、単にマンガワンから離れるだけでなく、小学館という出版社全体の体質に対するNOを意味しています。
③声を上げたくても動けないオリジナル作家の苦境
ボイコットの波が広がる一方で、忘れてはならないのがマンガワンオリジナル連載作家の存在です。
外部から寄稿している作家は、他の掲載先があるため比較的身動きが取りやすい。
竹良実氏も「私がこの判断を選べたのはやはり他の発表場所があるから」と認めています。
しかしオリジナル連載の作家は、契約上マンガワン以外での掲載が難しいケースが多い。
バティ氏は「マンガワン、外部から掲載してる作家さんは撤退すれば良いだけだが、マンガワンオリジナルの作家さんどうすりゃええねん……契約あるから簡単に他いくってわけにもいかんだろうに」と投稿し、この構造的な問題を指摘。
「この先読まれる数が減るのは確定的なのに動けない」という言葉が、オリジナル作家の苦境を端的に表しています。
御家かえる氏は「現状、さすがにマンガワン編集部の対応に疑問を感じております旨、自分の担当編集者には伝えました」と控えめに投稿。
公には大きく声を上げられないけれど、内部で意思を示すという「静かな抗議」の形です。
お茶です。氏は読者の立場から「漫画を生み出してくれてる方々からも拒否反応が強過ぎてヤバ。私の追ってる漫画達、マンガワンオリジナルなんだけどマンガワン自体がもうだめかな、これは」と投稿。
オリジナル作品のファンにとっても、マンガワンの信頼失墜は他人事ではないのです。
ボイコットできる作家とできない作家の二極化。
これは声明が生んだ新たな分断であり、マンガワンが解決すべき最も切実な問題の一つでしょう。
セクシー田中さん事件との既視感がぬぐえない
今回のボイコット連鎖を見ていて、多くの人が頭をよぎったであろう事件があります。
2024年の「セクシー田中さん」事件です。
原作者・芦原妃名子氏がドラマの脚本改変トラブルについてSNSで告発した後、急死するという痛ましい結末を迎えた事件。
あの時も小学館の対応は「社外発信予定なし」という沈黙から始まり、半年後の調査報告書では自社の問題を曖昧にし、「編集部の認識不足」で済ませようとしました。
今回の山本章一事件との共通点は、嫌になるほど多い。
隠蔽を優先する初動。
セクシー田中さんではトラブル発覚後に社外発信を禁じ、山本章一事件では判決から7日間沈黙した後に300文字の声明。
どちらも「読者やクリエイターより自社ブランドを守る」という姿勢が透けて見えます。
クリエイターが巻き添えになる構造。
芦原氏は原作者の意向が伝わらない「伝言ゲーム」に苦しめられ、鶴吉繪理氏は原作者の素性を知らされないまま作品に巻き込まれた。
形は違えど、「クリエイターを守る気がない」という本質は同じです。
声明後にかえって炎上が拡大する結末。
セクシー田中さん事件でも、報告書の発表後に「不十分だ」という批判が再燃しました。
今回も声明がボイコットの引き金になっており、「火消しのつもりが火に油」というパターンが繰り返されています。
瑞光氏の「セクシー田中さん事件の時も同じだったけど、原作者軽視・隠蔽体質が変わらないなら、作家として関われない」という言葉は、多くのクリエイターの総意を代弁しているように思えます。
近藤信輔氏の投稿も印象的でした。
「治安が悪かったり不道徳なマンガって、平和な世の中だからファンタジーとして楽しめるのであって、実際に同じような被害が身近に横行したら楽しめないんですよ。だからクリエイター自身がそれをぶち壊すようなことやらかしたら、キレるのは当たり前なんですよ」
この言葉が突きつけているのは、「作品と作者は別」という議論を超えた現実。
創作の土台そのものが壊されたとき、クリエイターが怒るのは当然だということです。
セクシー田中さん事件から約2年。
「小学館は変わった」と言える材料は、残念ながら今のところ見つかりません。
マンガワンは今後どうなるのか
最後に、マンガワンというプラットフォームの今後について考えてみます。
すでにボイコット宣言は発表から7時間以内に20件以上が確認されており、その後も増え続けています。
外部寄稿作家の撤退は比較的スムーズに進む一方、オリジナル連載作家は契約の壁に阻まれている状態。
読者サイドでも「マンガワン自体を使うのをやめた」「アプリを消した」という報告がXで相次いでおり、アプリのダウンロード数急落も報じられています。
短期的には、連載作家の離脱による新作の減少が避けられないでしょう。
看板作品の引き上げが続けば、プラットフォームとしての魅力は大きく低下します。
中期的には、オリジナル連載作家の移籍ラッシュが起きる可能性も。
契約更新のタイミングで他媒体に移る判断をする作家が増えれば、マンガワンのラインナップは大幅に痩せていくことになります。
もっとも、これは小学館の対応次第で変わる話でもあります。
成田卓哉氏への処分の公表、鶴吉繪理氏への具体的な補償方針、再発防止策の具体化。
この3つが示されなければ、クリエイターと読者の信頼回復は難しいでしょう。
逆に言えば、これらを誠実に実行すれば、まだ取り返しがつく段階ではあります。
ただし、セクシー田中さん事件の後も体質が変わらなかった前例を考えると、楽観はできません。
「また同じことが起きるのでは」という不信感は、一度の声明では拭えないほど深くなっています。
漫画家たちが声を上げたことで、「才能があれば許される」「人気作品だから目をつぶる」という業界の暗黙のルールに、明確な異議が突きつけられました。
このボイコットが一過性の怒りで終わるのか、それとも業界の仕組みを変える転換点になるのか。
被害に遭われた女性の回復を祈りながら、今後の動きを注視していきたいと思います。





