2026年ミラノ・コルティナオリンピックで金メダルを獲得した木原龍一選手。
三浦璃来選手との「りくりゅう」ペアが世界の頂点に立った瞬間、テレビの前で思わず声を上げた方も多かったのではないでしょうか。
そんな感動冷めやらぬ中、ネット上でじわじわと広がっているのが木原選手の「目」についての話題です。
「木原龍一の目、なんか寄り目に見えない?」
「斜視なのかな、治さなくていいの?」
という声が検索ワードにも表れてきています。
自分や家族や知人に似たような症状があれば気になるのは当然のこと。
さらに最近では「スマホの見すぎで斜視になる」という話を耳にした方も多く、「もしかしてスマホが原因なの?」と混乱している方もいるようです。
この記事では、木原選手の目の状態を整理しながら、斜視の種類・原因・治療の選択肢まで、わかりやすく深掘りしていきます。
目次
木原龍一の左目、内側に寄って見える理由
フィギュアスケートの演技中、技術や表現力に引き込まれながらも、ふと木原選手の目元に気づいた方は多いはずです。
写真や映像をよく見ると、左目が内側(鼻側)に寄っているように見える場面があります。
これは医学的に「内斜視(ないしゃし)」と呼ばれる状態です。
両目の視線が同じ方向を向かず、片方の目だけが内側にずれて見える、というのが内斜視の特徴です。
「斜視」と聞くと何か深刻な病気のように聞こえますが、実は日本人の約2〜3パーセントに見られるありふれた症状で、特別珍しいことではありません。
木原選手本人が公式にコメントしているわけではないものの、「木原龍一 寄り目」「木原龍一 斜視」という検索ワードが増加傾向にあり、多くの人が気づいていることがわかります。
気になってしまうのは自然なことですし、悪いことでもないのですが、大切なのはその状態を正しく理解することではないでしょうか。
ネット上のファンの反応は三つに分かれる
SNS上の反応を見ると、大きく三つの流れがあります。
まず一番多いのが、共感と称賛の声です。
「私も内斜視で、人前に立つのにずっと勇気がいる。木原選手の活躍が本当に力をくれる」という投稿には、多くの「いいね」が集まっています。
同じ症状を抱える人たちにとって、木原選手の存在は単なるアスリート以上の意味を持っているのです。
次に多いのが擁護の声。
「目のことをからかうような投稿を見て、思わずリプしてしまった。誰だって体の特徴はある」という言葉には、多くの共感が集まっていました。
そして純粋な疑問の声もあります。
「内斜視ってスポーツに影響しないの?」という知的好奇心からくる問いかけで、これはむしろ正当な疑問といえますね。
揶揄するような声も一部ありますが、それを上回る称賛と共感の声が、木原選手の演技がいかに人々の心を動かしているかを示しています。
木原龍一の斜視、その原因はなに?スマホとの関係は?
ここで多くの人が気になるのが「原因」ではないでしょうか。
特に最近、「スマホを長時間見ていると斜視になる」という話が広まっているため、「木原選手もスマホのせいでは?」と考える人もいるようです。
ただ、これはまったく別の話として切り分けて考える必要があります。
スマホと斜視の関係、本当のところ
まずスマホについての話を整理しましょう。
近年、眼科の現場で増えているのが「急性後天性内斜視」と呼ばれる症状で、スマートフォンを長時間・近距離で見続けることとの関連が指摘されています。
目は近くのものを見るとき、両目が内側に寄る「輻輳(ふくそう)」という動きをします。
これが長時間・高頻度で繰り返されると、眼球を動かす筋肉に過度な負担がかかり、目が内側に寄ったまま戻りにくくなることがあるのです。
「スマホ斜視」とも呼ばれるこの現象は、特に10代〜20代の若い世代に増えており、眼科医たちが警鐘を鳴らしています。
症状の初期段階では、スマホの使用を制限することで回復するケースもありますが、放置すると手術が必要になることもある、なかなか侮れない症状です。
「最近、スマホを見た後に目が疲れる」「ものが二重に見えることがある」という方は、念のため眼科を受診することをおすすめします。
ただし、木原選手の斜視はスマホとは一切関係ありません。
なぜそう言えるのか、次の項目で詳しく見ていきましょう。
木原選手の場合は「先天性」の一択
木原選手の症状の原因を探るうえで注目すべきは、1995年頃、3歳前後の写真にすでに同じ特徴が見られるという点です。
学生時代やジュニア期の写真でも、左目が内側に寄った状態は一貫して確認できます。
成長に伴って症状が変化した様子はなく、ずっと同じ状態が続いているのです。
これは医学的に「先天性内斜視」のパターンに当てはまります。
「先天性」というのは生まれつき、あるいは乳幼児期のごく早い段階で発症するもので、主な原因として遺伝的素因や遠視との関連が挙げられています。
スマホが存在しない時代から症状があるわけですから、スマホ斜視との関連性はゼロ。
一方でよく飛び交う「脳震盪のせいでは?」という説もあります。
木原選手は2019年に練習中の事故で脳震盪を経験しており、その印象が強い方は「目への影響では?」と連想しやすいのは理解できます。
しかし3歳の写真に症状が確認できる以上、2019年の事故との因果関係は考えにくいでしょう。
外傷による「後天性斜視」は、眼球を動かす筋肉や神経が損傷を受けて発症するもので、木原選手のように幼少期から一貫している症状とはまったく性質が異なるのです。
先天性内斜視、どんな特徴がある?
先天性内斜視を持つ子どもは、生後6ヶ月以内に症状が現れることがほとんどです。
目が内側に大きく寄るため、親がすぐに気づいて小児科や眼科を受診するケースが多いです。
治療は早期に始めるほど効果が出やすく、眼鏡による矯正や、場合によっては幼児期の手術が選択されます。
ただし、治療を行っても完全に正常な状態に戻るわけではなく、症状を軽減するというのが現実的なゴールです。
木原選手も幼少期に眼鏡を使用していたという情報があり、何らかの治療や対処をしてきた可能性は十分あります。
成長する中で症状が残っていたとすれば、それは「手を抜いた」のではなく、「それが今の自分の特徴」として共存してきた結果ではないでしょうか。
木原龍一のより目は治らない?手術という選択肢の現実
「なぜ治さないの?」という声は、悪意よりも純粋な疑問として多く寄せられています。
現代の医療技術なら手術で改善できそう、という発想自体はとても自然ですよね。
では実際に、斜視の手術とはどういうものなのか。
そして、なぜ木原選手がその選択をしていない(と思われる)のか、掘り下げてみましょう。
斜視手術のリアルな話
斜視の治療手術は、眼球を動かす筋肉(外眼筋)の位置や長さを物理的に調整し、目の向きを整えるというアプローチです。
局所麻酔または全身麻酔で行われ、日帰りでの対応も可能な病院があります。
成功率自体は高い手術ですが、術後の経過が一筋縄ではいかないのが正直なところです。
手術後、多くの患者が一定期間「複視」を経験します。
複視というのはものが二重に見える状態で、脳が新しい視線の位置に慣れるまでの適応期間に生じるものです。
通常は数週間から数ヶ月で解消されるとされていますが、稀に慢性化するケースも報告されています。
さらに「過矯正」といって、今度は逆方向に目がずれてしまうリスクや、時間が経って元の状態に再発するリスクも存在します。
ネット上には「外斜視の手術を2回受けたが、結局戻ってしまった」という体験談も少なくなく、一度で完結しないケースもあるのです。
「手術すれば解決」と簡単には言えない、そういう側面があることはしっかり頭に入れておきたいですね。
アスリートにとって「手術」が意味するもの
一般の人が斜視手術を検討する場合と、トップアスリートが検討する場合では、リスクの重み方がまったく違います。
ペアスケートにおいて、視覚は文字通り命綱です。
パートナーとの呼吸を合わせるタイミング、高速で移動しながらの空間認識、リフトで三浦選手を持ち上げる際の距離感と高さの把握——これらすべてが精密な視覚情報を土台にしています。
術後に複視が出れば、練習への復帰が大幅に遅れ、長年かけて構築してきた感覚が根底から崩れる可能性があります。
手術が成功したとしても、適応期間のリスクと競技への影響を考えれば、現役中に踏み切るのは相当な「賭け」と言えるでしょう。
むしろ、その状態のまま世界最高得点を叩き出した事実が、「手術しない」という判断の正しさを証明しているのかもしれません。
「治らない」ではなく「治さない」という合理的な判断
木原選手の場合、正確には「治らない」のではなく「治さない」という能動的な選択をしている可能性が高いと思います。
先天性内斜視は、幼少期に早期治療を始めた場合、ある程度の改善は見込めます。
しかし木原選手が子どもの頃に何らかの治療を受け、それでも症状が残ったとすれば、大人になってからの手術は「さらなる改善」ではなく「新たなリスクを引き受けること」になります。
Xにこんな投稿がありました。
「同時視ができないから立体的には見えていないはずだし、使う目が交互に変わるからスポーツには不利なはずなのに、木原選手からはそれをまったく感じさせない強さがある」という言葉です。
これは同じ症状を持つ当事者の声で、実感がこもっているだけに説得力があります。
斜視のある人の中には、両目の情報を同時に処理する「同時視」が難しく、片目が優位に機能する「利き目の固定」や、脳が片目の情報を無意識に抑制する「抑制」という適応が起きていることがあります。
これは一見不利なように聞こえますが、脳が「自分だけの見え方」に最適化されている状態とも言えます。
木原選手も、長年の競技生活を通じて自分の視覚特性に完全に適応した感覚を身につけてきたはずです。
今さら手術で「見え方」を変えてしまうことは、長年積み上げた感覚システムをリセットすることを意味します。
今の体と感覚のまま、世界の頂点に立てているのなら、それが答えなのではないでしょうか。
ミラノ五輪での演技が、すべての答えだった
2026年ミラノ・コルティナオリンピックでの木原選手の演技は、目の状態がどうであれ議論の余地を与えないものでした。
ショートプログラムで5位という状況から、フリーで見事な逆転劇を演じたのです。
フリーの得点は世界歴代最高となる158.13点。
合計231.24点での金メダル獲得は、多くの人の予想を超えた結果でした。
楽曲「グラディエーターⅡ」に乗せた演技は、息をのむようなスピードと圧倒的な高さのリフトで会場全体を飲み込み、三浦選手との完璧な一体感を見せてくれました。
33歳という年齢で、腰椎分離症、脳震盪、肩の怪我など数々のダメージを乗り越えてたどり着いた頂点。
正直、これには心から驚かされました。
目が内側に寄っていても、立体視に制限があっても、世界で最も美しく評価されるペア演技を完璧にやりきった事実は、誰にも否定できないのです。
斜視と向き合うすべての人へ
木原選手が自身の目について公式にメッセージを発信しているわけではありません。
それでも、その生き様が雄弁に語っていることがあります。
体の特性をハンデとして捉えるのではなく、それと共存しながら磨き続けることで、想像もしなかった場所まで到達できる——木原選手はその生きた証明です。
「内斜視があるから、人前に出るのに勇気がいる」と打ち明けていた人の言葉を思い出します。
そういった方々にとって、木原選手の演技と結果は、金メダルをはるかに超える価値を持っているのではないでしょうか。
目の見た目がどうであれ、氷上で繰り広げられたあの世界は本物です。
数値で測れる視力を超えた、豊かで広い視野の証明。
木原選手が教えてくれるのは、「完璧な体」ではなく「自分の体への深い理解と適応」こそが、人を頂点へ連れていくということかもしれません。





