トイレットペーパー不足はデマ?災害のたびに棚が空になる理由
トイレットペーパーは、大きな出来事があるたびに店の棚から消えてきた品物です。
1973年のオイルショック、2011年の東日本大震災、そして2020年の新型コロナの広がりはじめ。
ところが2020年2月のときは、工場はいつもどおり動いていて、在庫も足りていたことが分かっています。
それでも棚は空になりました。
足りているのに消えるのはなぜなのか、そして次に棚が空になったとき慌てずに済むには何を置いておけばいいのか、順に見ていきます。
2020年2月に棚が空になった理由
きっかけは、SNSに流れた「トイレットペーパーがなくなる」という話でした。
マスクと原料が同じだから、マスクを増産すると紙が足りなくなる、という理屈も添えられていたと報じられています。
実際には、トイレットペーパーの主な原料はパルプや古紙で、不織布のマスクとは別物。
日本家庭紙工業会は2020年2月28日、国内で出回っているトイレットペーパーの大部分は国産で、原料も中国に頼っていないこと、需要に見合う供給量と在庫があることを発表しています。
経済産業省も、のちにこのときのことを振り返りました。
誤った情報が発端になって買いだめや買い占めが起き、全国で品切れが相次いだ、と書いています。
生産は通常どおり続いていたけれど、ごく短い期間に注文が急に増えて、出荷が追いつかなかったのだそうです。
メーカーの倉庫には在庫があったのに、運ぶトラックの手配が注文の勢いに追いつかなかったとも伝えられました。
足りなかったのは紙ではなく、店まで運ぶ時間のほうだったわけです。
棚が空いているのを見た人が、念のために1パック多く買う。
その空いた棚の写真がまた広がって、次の人が店へ向かう。
誰かひとりが悪いわけではなく、一人ひとりの「念のため」が重なると、本当に棚が空になるんですよね。
フリマアプリでは、ふだんの3倍ほどの値段で出品されて落札される例まで報じられました。
1973年から続く同じ光景
トイレットペーパーの買い占めと聞いて、年配の方がまず思い出すのは1973年の秋です。
第一次オイルショックで石油の値段が跳ね上がるなか、「紙がなくなる」という話が広がって、スーパーに人が押し寄せたと伝えられています。
あのときの混乱も、品物が作れなくなったからというより、不安から買いに走る人が一度に増えたことが大きかったと言われる騒ぎです。
2011年3月の東日本大震災では、被災地から離れた首都圏でも、食料品や日用品が店頭から消えました。
被災地以外での買いだめが品薄の一因とされ、被災地へ届けるはずの物資に響くことを心配して、買いだめを控えるよう呼びかけられています。
品物は時代ごとに違っても、「なくなるかもしれない」という話が先に走り、あとから棚が空になるという順番は同じ。
そして災害のときは、その「話」そのものがいつもより増えます。
災害のたびに出回るデマ
2016年4月の熊本地震では、最初の大きな揺れがあった夜、「動物園からライオンが逃げた」という投稿がTwitter(当時)に流れました。
熊本市動植物園には翌日にかけて100件以上の問い合わせが寄せられ、職員が対応に追われたそうです。
投稿した人は、その年の7月に偽計業務妨害の疑いで逮捕され、「悪ふざけだった」と話したと報じられています。
2024年1月の能登半島地震では、偽の救助要請がSNSに出回りました。
総務省は、主要なSNSの運営会社に対して、利用規約に沿った適切な対応を取るよう求めています。
助けを求める声に見える投稿ほど、見た人は放っておけません。
だからこそ、善意で広めた一回が、そのまま混乱の一部になってしまうのがつらいところです。
見分けるいちばん手前の方法は、その話を誰が言っているのかを確かめること。
品物の話なら、作っている業界団体やメーカーの発表を見る。
被害や避難の話なら、自治体や消防、気象庁の発表に当たる。
トイレットペーパーのときも、答えは業界団体がいちばん早く出していました。
トイレットペーパーは1か月分が目安
では、次に棚が空になったとき慌てないためには、何を置いておけばいいのでしょうか。
経済産業省は2022年の防災の日に合わせて、家庭でトイレットペーパーを備蓄しておくことをすすめる記事を出しています。
理由のひとつは、作っている場所の偏りです。
トイレットペーパーはほとんどが国産で、国内生産の約4割を静岡県で作っているとのこと。
大きな地震で県内の生産が止まれば多くの家庭に影響が出るおそれがあり、増産をしても1か月ほどは混乱が起きると見込まれています。
備えておく量は、約1か月分が目安です。
一般的な市販品なら1人で1週間に1ロールほどを使うとされていて、4人家族なら約16ロールで1か月は安心、という計算になります。
置き場所が気になる家には、芯がなく長く巻いた備蓄向けのものもおすすめです。
こちらは約6ロール分の場所に、1か月分をしまえるとのこと。
スコッティ フラワーパック 3倍長持ち ダブル 12ロール
エリエール エルヴェール 芯なしトイレットティシュー 200m×6ロール シングル
ここで大事なのは、騒ぎが起きてから買うのではなく、何もない日に少しずつ足しておくことです。
いつもの買い物で1パック多めに買い、古いほうから使っていけば、棚が空になった日にも店へ走らずに済みます。
食べ物や水の備えをどう回していくかは、こちらにまとめました。
停電の夜に頼れる情報源
うわさに振り回されないためには、確かな情報を受け取れる道具が手元にあると心強いですね。
大きな災害では停電が起き、スマホの電池残りも気になってきます。
そんなときに頼りになるのがラジオです。
自治体の呼びかけや交通、電気や水道の情報が流れてくるので、ネットで見かけたうわさを確かめる手がかりにもなります。
手回しで充電できるものなら、乾電池が切れても聴き続けられるので安心です。
パナソニック 手回し充電ラジオ RF-TJ20(ホワイト)
災害のあとの便乗した値上げや、被災した家を狙う訪問業者のことは、こちらで見ています。
2020年の春、工場はいつもどおり紙を作り続けていました。
それでも棚が空になったのは、紙が足りなかったからではなく、みんなが同じ日に不安になったからです。
家に1か月分の紙があれば、空の棚の写真を見ても「うちは大丈夫」と思えます。
その一言が言える家が増えるほど、次の騒ぎは小さくなっていくのかもしれません。





