「石油備蓄は232日分もあるんだから、まだ大丈夫でしょ」
「去年も備蓄米が放出されて乗り切れたし、今回もなんとかなるって」
もし今そんなふうに思っているなら、ちょっとだけ立ち止まって、この記事に目を通してみてほしいのです。
2026年4月13日午後11時(日本時間)、米中央軍(CENTCOM)によるホルムズ海峡の海上封鎖が発効しました。
パキスタン・イスラマバードで21時間超に及んだ米国・イランの直接和平交渉が4月12日に決裂し、その直後にトランプ大統領がCENTCOMへ発令した、いわゆる「逆封鎖」です。
CENTCOMは今回の作戦を「イランの港湾を対象とする選択的封鎖」と位置づけており、イラン以外の国の港を行き来する民間船舶の航行は妨げないとしています。
ただし、ふだん1日約135隻が行き交うこの海の大動脈は、2月末の米イスラエルによるイラン攻撃以降すでに事実上の封鎖状態が続いており、CENTCOMの港湾封鎖によってイラン経済の生命線である原油密輸と通航料収入が断たれる構図になっています。
テレビや新聞では「原油価格が高騰しています」というニュースが繰り返し流れていますが、本当に怖いのはそこではありません。
今回起きているのは「モノが高くなる」話ではなく、「モノ自体が届かなくなる」話です。
この違いがピンとくるかどうかで、これから数ヶ月の備え方がまるで変わってきます。
政府は「直ちに影響なし」を繰り返していますが、その言葉の裏で何が進んでいるのか。
テレビがあまり深掘りしない「供給停止」の全貌をわかりやすくお伝えしていきましょう。
https://x.com/f10523/status/2037000496142319875
目次
「供給不安」と「供給停止」はまったく別のゲームである
まず最初に知っておいてほしいのが、今回の危機と過去の危機は「ゲームのルール」そのものが違うということです。
1970年代のオイルショックやコロナ禍のときも、原油価格が跳ね上がったりスーパーから商品が消えたりして大騒ぎになりました。
ただ振り返ってみると、あのときはモノ自体は回っていた。値段は上がったけれどお金を出せば買えましたし、マスクや小麦粉も数週間で棚に戻ってきた。
物流そのものが止まったのではなく、需要と供給のバランスが一時的に崩れただけだったからです。これが「供給不安」——ざっくり言えば「高いけれど手に入る」状態です。
では今回はどうか。
ホルムズ海峡で起きているのは「供給停止」——モノの流れそのものが物理的に断たれている状態です。
2月末の米・イスラエルによるイラン攻撃以降、イランは「敵国船舶の航行は自衛権の行使として認めない」として事実上の通航制限を続けてきました。無線で通りかかる船に警告を飛ばし、ときに船舶を攻撃してみせることで、海の保険料を平時の12倍にまで跳ね上げる「コスト封鎖」が長期化。
保険料が12倍というのは、月3,000円の自動車保険がいきなり36,000円になるような感覚で、船会社にとっては怖くて船を出せない状態が続くことを意味します。
そして4月13日、米国が加わりました。
CENTCOMはイランの港湾に出入りする全船舶と、イランに通航料を支払った船舶を対象とする「選択的封鎖」を発動。米海軍の駆逐艦2隻はすでに海峡で機雷除去作業に着手しており、国際エネルギー機関(IEA)に加盟する30か国近くが節電対策に動き始めています。
通航量はほぼ停止状態で、通常1日135隻のところ、4月8日にペルシャ湾を出た船舶はわずか7隻、しかもすべてイラン関連の船舶でした。
数百隻規模の船がペルシャ湾の中で身動きが取れず、日本船舶も42隻が足止めされている状況です。
「値段が上がる」のと「届かなくなる」のでは、私たちの暮らしへの影響はまるで別次元。スーパーの棚の商品が2割高くなるのと、棚が急速に薄くなっていくのとでは、心の余裕もまったく違ってきます。
石油備蓄232日分の盲点——ナフサ在庫はたった20日
「でもさ、日本って石油の備蓄がたっぷりあるんでしょ?すぐには困らないんじゃない?」と思った方、その気持ちはよくわかります。
たしかに2026年1月末時点では、日本の戦略石油備蓄は国の分と民間の分を合わせて約254日分ありました。ところが、ここに大きな落とし穴が隠れています。
ホルムズ封鎖が始まった2月末以降、政府はすでに過去最大規模の備蓄放出に踏み切っています。
3月16日に民間備蓄15日分の放出を開始し、3月26日には国家備蓄の1ヶ月分(約850万キロリットル)の放出もスタート。国家備蓄の取り崩しは2022年のウクライナ侵攻以来4年ぶりの措置でした。
その結果、4月3日時点での石油備蓄は合計232日分(国家備蓄146日分、民間備蓄80日分、産油国共同備蓄6日分)に目減りしています。政府は5月上旬以降にさらに国家備蓄を追加放出する方針を示しており、数字は今後も減っていく前提です。
「254日分もあるから安心」という前提自体が、すでに過去の話になっているわけです。
そしてもう一つ、もっと根本的な問題があります。
石油備蓄というのは「原油」の備蓄であって、原油から作られる「製品」の備蓄ではないという点です。
ここ、ちょっとわかりにくいので、お料理にたとえてみます。
冷蔵庫に小麦粉が山ほどあっても、それだけではパンは焼けません。イースト菌もお水もオーブンも必要です。
原油もまったく同じで、備蓄してある原油を私たちが実際に使える「モノ」に変えるには、精製というプロセスを通す必要があります。
この精製の過程で作られる、ものすごく大事な中間素材が「ナフサ」と呼ばれるものです。
聞いたことがない方も多いかもしれませんが、ナフサは石油化学産業の「出発点」みたいな存在。
ナフサが不足するっていう話を聞いてからスーパーや100均に行くと、見渡す限りナフサで驚愕してる
— 珠【たま】 (@h_tama78) March 22, 2026
ここから「エチレン」という素材が作られて、そのエチレンがプラスチック製品の原料になります。流れとしては、原油→ナフサ→エチレン→プラスチック製品、というイメージです。
問題は、日本のナフサ供給の4割強が中東からの製品輸入に依存していたこと。
国内生産分も4割程度ありますが、中東産ナフサの供給がホルムズ封鎖で停止したことで深刻な影響が出ています。国内のナフサ在庫はわずか約20日分しかなく、原油備蓄232日分という数字とは裏腹に、石油化学製品の原料はあっという間に底をつく計算です。
エチレンの減産はすでに始まっており、国内12ヶ所ある生産拠点のうち半数で減産が拡大しています。原油があっても、精製が追いつかなければその先の製品は作れない——これがニュースではなかなか語られない「備蓄の盲点」です。
TOTO・LIXILがユニットバスの新規受注を停止——建築資材にも波及
ナフサ不足の影響は、すでに具体的な企業発表という形で表面化しています。
2026年4月13日、TOTOがシステムバス・ユニットバスの新規受注を停止したことが明らかになりました。取引先に同日付で通知され、再開時期は未定。天井や壁に使われるフィルム接着剤やコーティング剤に含まれる有機溶剤が不足しており、この有機溶剤こそナフサ由来の製品です。報道を受けてTOTO株は後場で一時8.8%安まで急落しました。
同じ日、住宅設備大手のLIXILも関連商品で受注調整・出荷制限に動いていることが業界内で共有されており、さらに両社ともトイレ・ウォシュレット等で出荷上限が設定される動きも出ています。
この動きは4月10日にTOTOが一部浴槽色の見積もり・出荷停止を発表したのが発端で、4月11日以降、業界には受注停止を知らせるFAXが次々と届き始めた、という現場の証言もあります。
住宅設備業界からは「Panasonic・クリナップ・タカラスタンダードからも同様の発表が出る可能性があり、残るメーカーに注文が殺到するのは確実」という見方が出ています。塗料・断熱材・配管部材などリフォーム全般の資材調達も厳しくなると見られており、ナフサ在庫が底を突く5月以降が山場というのが業界関係者の共通認識です。
国内メーカーはインド・東南アジア・アフリカからのナフサ調達を進めており、夏以降に供給が回復する可能性はあります。ただし再開後は注文殺到で「数ヶ月待ち」になるのは確実で、コロナ禍の給湯器不足と同じパターンが予想されます。
住宅のリフォームは一見すると今回の危機から遠い話に思えますが、ナフサ不足はこうして静かに建築現場にまで広がっているのです。
ガソリンだけじゃない——石油が止まると暮らしから消えるモノ
「原油不足」と聞くと、まず頭に浮かぶのはガソリンの値上がりだと思います。
たしかにそれも大きな問題で、封鎖宣言後にはWTI原油先物価格が終値で100ドルを超え、時間外取引では104ドル台まで上昇する動きも見られました。市場は神経質な状態が続いています。
ただ、実は石油が関わっているのはガソリンだけではありません。私たちの日常生活は想像以上に石油化学製品に囲まれており、ナフサ不足の影響はガソリン高騰よりも先に、もっと身近なところに現れる可能性があります。
たとえば、スーパーに並んでいるお肉やお魚が乗っている白い食品トレー。あれは石油から作られたプラスチックでできています。食品トレーがなくなると、食品そのものは入荷しても「衛生的に並べられない」という事態が起こり得ます。食べ物はあるのに売れない、という状況です。
キッチンをぐるっと見回してみてください。ラップ、ペットボトル、レジ袋、洗剤のボトル、シャンプーの容器——石油由来じゃないモノを探すほうが難しいくらいです。おむつや生理用品も石油化学製品の塊ですし、ゴミ袋がなくなればゴミ収集の仕組み自体が回らなくなります。
ナフサから作られる代表的なもの
・食品トレー
・衣料品
・自動車のタイヤ
・医療用品
・合成洗剤ナフサ不足になると、これらの供給が不安定になります💦 pic.twitter.com/qBa6VZFmwY
— marketmaker (@marketmaker7) March 17, 2026
お子さんがいるご家庭だと、さらに身近な話になります。体操服、ランドセル、上履き、クレヨン、セロテープ、ノートの表紙——学用品のほとんどに石油化学素材が使われています。現代の日用品で石油とまったく無関係なモノは、ほとんど見当たりません。
野村総合研究所(NRI)の3月31日公表の試算によれば、ナフサ由来の日用品(ラップ、ゴミ袋、洗剤ボトル、シャンプーなど)の値上がりだけで、4人家族の年間負担は1.8万〜2.6万円増加する見込みとされています。
エチレン減産が国内の生産拠点の半数にまで広がっている今、こうした製品の供給が細り始めるのは、あと数週間〜1ヶ月の話かもしれません。ガソリンの値段ばかりに目を奪われていると、足元で進行する「日用品が手に入りにくくなる問題」に気づけなくなってしまいます。
インドのガソリンスタンド☠️ pic.twitter.com/wXXmku8qL5
— チタロ (@PAGE4163929) March 25, 2026
これが原油危機の、本当に怖いところです。
備蓄米放出の裏側——「食料自給率38%」の本当の意味
原油の話が続きましたが、ここでもう一つ、多くの人が見落としている問題に触れておきたいと思います。食料の話です。
2025年、お米が足りなくなって大騒ぎになったのを覚えているでしょうか。スーパーからお米が消え、「令和の米騒動」とまで言われたあの混乱。あのとき政府は備蓄米の放出に踏み切って、なんとか事態を収めました。
問題は、そのツケが今になって回ってきていることです。
2024年から2025年にかけて、備蓄米は複数回にわたって放出されました。政府の備蓄目標は約100万トンで年間消費量の1〜2ヶ月分に相当するのですが、放出を繰り返した結果、在庫がかなり目減りした状態で今回のホルムズ危機を迎えてしまったのです。
完全に枯渇したわけではないものの、次に本格的な食料供給の混乱が起きたとき、「また備蓄米を出せばいい」と言える余裕は狭まっています。
さらに根っこの部分にも、大きな問題が潜んでいます。
日本の食料自給率38%(カロリーベース)という数字、一見すると「4割近くは国内で作れている」ように聞こえます。でもこの38%は、輸入肥料と輸入燃料と輸入飼料が安定して届くことが大前提になっています。
現代の農業では、お米や野菜の収穫量の4〜5割が合成窒素肥料に支えられています。太陽と土と水だけでは、今の量はとうてい作れません。
その肥料の主力原料である尿素は、世界の取引量の約3分の1がホルムズ海峡を通って運ばれていました。日本は尿素の6〜7割をマレーシア経由で仕入れていますが、そのマレーシア自身が中東の原料に頼っているため、「玉突き」で日本への供給もじわじわ細ってくる構造です。
政府は代替調達で「4ヶ月分は確保した」と主張していますが、現場では尿素価格が40〜70%上昇し、肥料の目詰まりが続いています。農林水産省の試算でも肥料価格が70%上がれば作付面積が15〜25%減少するリスクが指摘されており、化学肥料を使わない場合、水稲の単収は通常の約6割まで落ちるというデータもあります。
つまり「自給率38%」の内実すら維持できなくなるシナリオが、決して絵空事とは言えなくなりつつあります。
畜産は飼料のほぼ全量を輸入に頼っているため、物流が長期間止まれば深刻な打撃は避けられません。スーパーのお肉や卵、乳製品の棚がどんどん薄くなっていく——その可能性を、頭の片隅に置いておくべき局面です。
ガソリン補助金が続いている本当の理由
ここでちょっと視点を変えて、一つ気になることを考えてみます。ホルムズ海峡がこれだけ大変なことになっているのに、なぜガソリン補助金はまだ続いているのか。
「国民の暮らしを守るため」——政府の公式な説明はそうなっています。もちろんそれも間違いではありません。政府は3月24日、2025年度予備費から8,007億円の使用を閣議決定し、このうち7,948億円をガソリン補助金の基金に充てることを決めました。
もし明日いきなりガソリン補助金がなくなったら、何が起きるか。
WTI原油価格が100ドルを超えている今、補助金が切れればガソリン価格は一気に跳ね上がります。そうなれば、スタンドに人が殺到し、SNSは「オイルショックだ」の投稿であふれ、パニック的な買い占めが連鎖的に始まるでしょう。
その心理的パニックが実体経済を先に壊してしまう——これが一番マズいシナリオです。パニックで国民の体力が削られた状態で、そのあとに「本番の供給停止」がやって来たら、立て直す余力が残っていません。
つまり補助金の本当の役割は、単なる生活支援というよりも「パニックを先に起こさせないための時間稼ぎ」という側面があるのではないか。
経済の体温を人工的に保ちながら、その裏では代替調達の交渉(サウジのヤンブー港やUAEのフジャイラ港といったホルムズ海峡を経由しないルートの拡大)、備蓄放出のペース調整、外交ルートの模索が進められています。
「直ちに影響なし」は「安全です、心配いりません」という意味ではなく、「まだ準備が整っていないから、もう少しだけ時間をください」というサインなのかもしれません。
ガソリン補助金に今年度予備費から8000億円程度を支出へ 原油高騰の長期化に備えた対応 https://t.co/oOlCpmgITm
— TBS NEWS DIG Powered by JNN (@tbsnewsdig) March 23, 2026
明るい材料もまったくないわけではありません。高市首相は4月6日の参院予算委員会で「イランと首脳級を含めた電話会談を調整中」と述べており、4月7日の記者会見では「年を越えて原油の供給を確保できるめどがついた」とも説明しています。日本を含む6カ国の共同声明で「安全な航行の確保」を求める動きもあります。
ただし、CENTCOMによる港湾封鎖が発効した直後のため、交渉の見通しは不透明です。トランプ政権の出方しだいで状況は一夜にしてひっくり返る可能性もあります。「うまくいく可能性」に賭けるのか、「うまくいかなかった場合」に備えるのか——その判断は、結局それぞれの家庭に委ねられている状態です。
正常性バイアスが命取りになる——「前回大丈夫だった」の罠
ここまで読んでもなお、「さすがにそこまでひどくはならないでしょ」と感じている方もいるかもしれません。その感覚は、心理学で「正常性バイアス」と呼ばれる、人間の脳に組み込まれた防御反応です。「自分だけは大丈夫」「前回も乗り越えたから今回もなんとかなる」と思い込んでしまう心の癖のことで、地震や洪水の警報が出ても逃げない人の心理と同じメカニズムが、今まさに「供給停止」という目に見えにくい危機に対しても働いています。
とくに厄介なのが、「前回大丈夫だった」という成功体験がバイアスをさらに強くしてしまう点です。
コロナのときも大騒ぎになったけれど結局すぐ戻った。2025年の米不足も備蓄米を放出してなんとかなった。だから今回も大丈夫——この思考回路は一見もっともらしく聞こえます。
でも、繰り返しになりますが前回は「供給不安」で、今回は「供給停止」。同じ「危機」という言葉でも、ゲームのルールが根本から違っています。
この違いにいち早く気づいた人たちは、すでに動き始めています。
金融の世界では、投資家たちが日本の石油化学関連の株から資金を引き揚げて、アメリカのエタン関連企業にシフトしているという動きが報じられています。4月13日のTOTO株8.8%安は、その流れの一端です。
投資家は感情ではなく数字で動く人たち。その彼らが「日本から逃げ始めている」という事実は、一般の消費者にとっても無視できない警告です。
ある医師がSNSで「杞憂に終われば、それはそれで最高じゃないか」と書いていました。備蓄しておいて何事もなければ、ふだんの買い物として使えばいいだけの話。でも何も備えずに「本番」が来てしまったら、取り返しがつきません。どちらのリスクが大きいかは、冷静に考えれば明らかです。
今が「最後の準備ウィンドウ」——空白期間を家族で乗り切る
ここまでの話を整理すると、今起きていることのポイントは大きく3つにまとめられます。
1つ目は、今回は「供給不安」ではなく「供給停止」であること。2月末以来のイランによる事実上の封鎖に、4月13日のCENTCOMによる選択的封鎖が加わり、モノ自体が届かなくなるリスクが現実化しています。
2つ目は、石油備蓄の裏にナフサ在庫20日分という脆さが隠れていること。備蓄はすでに232日分まで目減りしており、TOTO・LIXILのユニットバス受注停止という形で影響が表面化し始めました。
3つ目は、2025年の備蓄米放出で政府の手持ちが減っていること。食料自給率38%の内実は輸入に支えられており、肥料危機でさらにもろくなりつつあります。
こうした状況の中で、私たち個人に何ができるのか。
備蓄と聞くと大げさなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、世紀末に備えてシェルターを掘れという話ではありません。目指すのは「政府や市場が対応してくれるまでの空白期間を、家族がふだん通りに暮らせるようにする」こと。その空白期間は、現実的に見て2週間から、長くても2ヶ月程度です。
心配なのは、この「準備できる時間」がいつ閉じるかわからないことです。トランプ大統領の次の一手で、あるいはイランの判断一つで、状況は一晩でガラッと変わり得ます。
物流が本格的に止まってからでは、ネットで注文しても届かない。スーパーに走っても、棚はすでに薄くなっている。気づいた人から静かに動き始めている——それが、2026年4月中旬のリアルな状況です。
具体的にどんなものから手をつければいいのか、次の章で備蓄品のリストをまとめておきます。大げさな防災グッズの話ではなく、ふだんの買い物を「ちょっとだけ多め」にするイメージで読んでみてください。
「供給停止」時代の備蓄品リスト——家族の日常を守る7カテゴリ
最後に、ここまでの話を踏まえて「供給停止」に備えるための具体的な備蓄品をカテゴリごとにまとめておきます。
ポイントは、特別な防災グッズではなく「ふだん使うものを、ちょっと多めに持っておく」という考え方です。ローリングストック——古いものから順に使って、減った分だけ買い足していくやり方なら、賞味期限切れの心配もほとんどありません。
では、7つのカテゴリを順番に見ていきます。
まず筆頭は無洗米。肥料危機の影響で今年秋以降のお米の価格上昇が見込まれています。無洗米は研ぎ水が不要で、水も燃料も節約できる点が特徴です。家族4人で2〜3ヶ月分なら30〜40キロが目安になります。
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次に缶詰類。サバ缶、ツナ缶、野菜の水煮、フルーツ缶など、タンパク質とビタミンを幅広くカバーできるものがあります。サバ缶は賞味期限が約5年あり、火を使わずそのまま食べられます。レトルトカレーやフリーズドライの味噌汁も一緒にストックしておくと、食卓のバリエーションが広がります。
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3つ目はトイレットペーパー。石油由来の包装材と輸送燃料の高騰の影響を受けやすい品目で、過去の危機でも棚から消えた実績があります。1ロール200メートルの大容量タイプは収納がコンパクトで、備蓄用のアルミ真空パックなら10〜15年保存できるものもあります。
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4つ目は蓄電池・発電機。ホルムズ海峡はLNG(液化天然ガス)の世界取引の約20%が通るルートでもあるため、封鎖が続けば電気やガスの価格も上がっていきます。ポータブル電源とソーラーパネルの組み合わせは、長期の停電時にスマホの充電やLEDライトの確保に使えます。
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5つ目は水と浄水器。ペットボトル水に加えて、携帯浄水器があればお風呂の残り湯や雨水を飲料水に変えることもでき、長期の断水にも対応できます。
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6つ目は石鹸・歯磨き粉・除菌シートなどの衛生用品。洗剤のボトルもシャンプーの容器も石油化学素材でできているため、ナフサ不足の影響をダイレクトに受けるカテゴリです。固形石鹸は液体ソープより保存性が高く場所も取りません。歯磨き粉、除菌シート、ウェットティッシュ(アルコールタイプ)もカバーしておきたい品目です。
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最後の7つ目は、意外と見落とされがちな下着・衣類。
化学繊維の原料もナフサ由来なので、衣料品の供給にも影響が出る可能性は十分にあります。
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とはいえ洋服を大量にため込む必要はなくて、下着と靴下を家族分「いつもより1シーズン分多め」に持っておくだけで十分。
お子さんの成長が早いご家庭なら、ワンサイズ上の下着や体操服を先に買っておくのも賢い判断かもしれません。
繰り返しになりますが、備蓄は「買い占め」ではありません。
日常的に使うものを少しだけ多めに持っておいて、使った分だけ補充していくだけのこと。
何も起きなければ、ふつうに消費すればいいだけの話です。
でも万が一のときには、それが家族を守る盾になる。
杞憂で終われば、それに越したことはありません。
ただ、「あのとき準備しておけばよかった」——その後悔だけは、なんとしても避けたいものです。





