2026年の春、ちょっと信じがたいニュースが広がっています。
「塗料が買えない」「断熱材の納期が読めない」という悲鳴が、建築現場から次々と聞こえてくるようになりました。
きっかけは、遠く離れた中東のホルムズ海峡で起きた出来事。
一見すると自分には関係なさそうな国際情勢の話に思えるかもしれませんが、実はこれ、私たちの暮らしの足元を揺らし始めている非常に厄介な問題なのです。
この記事では、なぜ今こんなことになっているのか、そして一人ひとりが冷静に打てる手は何なのかを、できるだけかみ砕いてお伝えしていきたいと思います。
目次
ナフサ不足で建築資材がピンチ!
そもそも「ナフサ」と言われても、ピンと来ない方が多いのではないでしょうか。
ナフサというのは、原油を精製してつくられる石油化学の基礎原料で、ざっくり言えば「粗製ガソリン」のような液体のこと。
原油が小麦なら、ナフサは小麦粉のようなポジション、と例えるとイメージしやすいかもしれません。
この小麦粉からパンやうどんができるのと同じで、ナフサからはプラスチック、合成樹脂、塗料、接着剤、断熱材、塩ビ管、壁紙、樹脂サッシなど、住宅を形づくるありとあらゆる資材が生まれているわけですね。
ところが2026年2月末、米国とイスラエルがイランを攻撃したことを引き金に、イラン側が船舶への威嚇や機雷敷設、海上保険の停止といった行動に出て、ホルムズ海峡が事実上封鎖される事態となりました。
日本は原油輸入の約9割を中東に頼っており、ナフサに至っては中東依存度が7〜8割ともいわれています。
つまり、この海峡一カ所が詰まるだけで、日本の化学産業の動脈がぎゅっと絞られてしまう構造になっていたのです。
しかも厄介なのが、日本の国家備蓄の仕組み。
原油の国家備蓄は約250日分と結構な量があるのですが、ナフサ自体は1993年の法改正で備蓄義務から外されてしまっていて、国内在庫は危機当初わずか20日分程度しかなかったといわれています。
「燃料じゃなくて原料だから」という理屈で外されたそうですが、その判断が今になって重くのしかかっているのかもしれません。
政府は3月26日から原油備蓄の放出を始め、米国や南米など中東以外からの代替輸入も倍増させています。
高市総理も4月5日に「少なくとも4ヶ月分は確保できる、代替輸入を強化すれば半年以上に延ばせる見通し」と発信しました。
ただ、これはあくまで調達努力の見込み値という側面が強く、4月時点でも三井化学や出光興産、三菱ケミカル、旭化成といった大手化学メーカーがエチレン製造設備の減産を続けており、川下の塗料メーカーや建材工場に実際の原料が届くかどうかはまた別の話。
不可抗力条項(フォースマジュール)を宣言するケースも相次いでおり、政府の説明と現場の肌感覚のあいだには大きな溝ができてしまっているのが実情ではないでしょうか。
ネット上には悲痛な声があがっています。
ナフサが入ってこないと廃業になります。
— 若狭 新一 (@shinichiwakasa) April 11, 2026
建築資材ショックの影響を受ける品目リスト
では具体的に、どんな資材がどれくらいのダメージを受けているのでしょうか。
ここを知っておくと、業者さんとの交渉や見積もりの読み方がぐっと変わってくるので、少し丁寧に見ていきたいと思います。
塗料・シンナー類の直撃
まず真っ先に打撃を食らっているのが塗料とシンナー類。
日本ペイントは3月19日発注分から建築用シンナーを一律75%値上げし、さらに1社1缶制限や抱き合わせ販売といった出荷制限も敷いています。
関西ペイントも4月13日出荷分からシンナー製品を50%以上値上げし、前年実績を上限とする数量制限を導入しました。
エスケー化研などの他社も軒並み50〜80%の値上げに踏み切っており、塗料本体についても5月以降にさらに10〜20%の追加改定が見込まれているといいます。
現場では、仕事はあっても材料がない、やればやるほど赤字、という悲鳴が広がっているのが現状。
断熱材の供給制限
次に深刻なのが断熱材の分野ですね。
カネカの「カネライトフォーム」は4月出荷分から40%値上げ、デュポン・スタイロの「スタイロフォーム」も5月出荷分から40%値上げという大きな動きが出ています。
押出法ポリスチレンフォーム全般で供給調整が入っており、受注制限や納期回答の保留といった対応も増えているとのこと。
新築やリフォームで数十万円単位の追加費用が発生するケースも、珍しくなくなってきました。
塩ビ・防水材への波及
塩ビ系の製品もかなり厳しい状況です。
信越化学工業や積水化学工業、大洋塩ビが塩化ビニル樹脂を1kgあたり30〜55円値上げしており、その影響は水道配管の塩ビ管、ビニル壁紙、樹脂サッシ、床材など内装・設備工事の広い範囲に及んでいます。
田島ルーフィングなどのアスファルト系防水材・ルーフィングも40〜50%の値上げと出荷制限が入り、屋根や外壁の防水工事が中断するリスクも出てきました。
「入荷未定」と言われたときの対処
もし見積もりを取った業者さんから「入荷未定です」と言われてしまった場合、そこで諦めずに確認してほしいポイントがいくつかあります。
主なチェックポイントは以下の通り。
- 水性塗料や無機系、鉱物系の代替材が使えないか聞いてみる
- 契約書に「資材高騰時のルール」や「材料不足時のペナルティなし」という条項を入れてもらう
- 3社以上で相見積もりを取り、水性を標準採用している業者を優先する
- 全面工事にこだわらず、劣化の激しい箇所だけ先にやる「部分工事」に切り替える
業界では2025年度の塗装工事業の倒産件数が143件と過去20年で最多を記録しており、特に業界の9割以上を占める中小・零細業者が価格転嫁できずに苦境に立たされているといいます。
この数字が2026年度にさらに悪化する可能性は、残念ながら高いと言わざるを得ない状況。
供給不安定な時代に「個人」でできる具体的な対策
ここまで読んで、「じゃあ自分は何をすればいいんだ」と感じた方も多いのではないでしょうか。
まず大前提としてお伝えしたいのは、シンナーや油性塗料を自宅に大量備蓄するような行為は絶対にやめたほうがいいということ。
消防法違反になるリスクがありますし、なにより火災の危険が跳ね上がります。
パニック買いは供給をさらに逼迫させるだけの、いわば自分の首を自分で絞める行為になってしまうのです。
代わりに取り入れてほしいのが、ローリングストックという考え方。
これは普段から使っているお気に入りの日用品を少しだけ多めに買っておき、古いものから消費しながら新しいものを補充していく仕組みのこと。
賞味期限切れで無駄になることもないですし、家族が慣れ親しんだ製品がいつも手元にある安心感が大きなメリットになります。
そしてここで一つ、地味ですが大事なポイントをお伝えしておきたいのです。
備蓄はネット通販で淡々と進めるのが、今の時代に合ったやり方なのかもしれません。
近所のドラッグストアで段ボール買いをすれば目立ちますし、周りの不安を煽ってしまう可能性もあります。
その点、ネット通販なら自分のペースで静かに進められますし、重たい缶詰や大容量のペーパー類を玄関まで届けてもらえるのは体力的にもありがたい話ではないでしょうか。
品薄になってから慌てて動くのではなく、棚に商品が並んでいる今のうちに少しずつ手を打っておくこと。
これが結局いちばん落ち着いていて、いちばん効く方法だと考えられます。
ゴミ袋
ナフサ不足はポリエチレンやポリプロピレンの供給に直結するため、ゴミ袋は真っ先に品薄や値上げが心配されるカテゴリ。
断水やゴミ収集の停止が起きたとき、生ゴミやおむつを放置せざるを得ない状況は、臭いの問題だけでなく衛生面でもかなりのストレスになります。
厚手で破れにくいタイプを日常使いしながら、少し多めにストックしておく発想が現実的かと思います。
ケミカルジャパン 厚口半透明 ゴミ袋
耐荷重25kg、厚さ0.025mmの業務用厚口タイプで、取っ手付きなので重いゴミもラクに運べる設計になっています。
箱タイプで収納しやすく、サイズ展開も豊富なので家庭のゴミ事情に合わせやすいのが嬉しいところ。
丈夫さについては口コミでも高く評価されており、いざというときの安心感が違ってきます。
|
|
紙屋街 PP Fukuro 防臭パン袋
強力防臭タイプのポリ袋が300枚入った大容量パックで、生ゴミやおむつ、ペットの排泄物の臭いをしっかり封じ込めてくれます。
断水時や避難所生活では、臭いの問題が家族間や近隣との小さなトラブルにつながることもあるもの。
これが一つあるだけで、周囲への気遣いにも余裕が生まれるのではないでしょうか。
|
|
トイレットペーパー
トイレットペーパーの原料はパルプなので直接ナフサとは関係ないように見えますが、実は包装フィルムや物流の停滞で入手しづらくなるリスクがあります。
2倍巻きや長期保存タイプを組み合わせて、じわじわ備えておくのが堅実なやり方ではないでしょうか。
牧製紙 無漂白 2倍巻きトイレットペーパー
1ロール100mのシングル大容量タイプで、通常の2倍の長さがあります。
同じ本数で倍持つ計算になるので、収納スペースを圧迫しないのがありがたいポイント。
無漂白・無香料で肌にやさしく、交換頻度も減らせるので物流停滞時のストレスを軽減してくれそうです。
|
|
HACONO トイレの女神PREMIUM
15年超の超長期保存が可能な備蓄専用ロールで、湿気にも強い設計。
普段使いのローリングストックとは別枠で、本当にいざというときの最後の砦として置いておくと、心理的な保険になってくれるかもしれません。
|
|
サランラップ
ラップ類はプラスチック原料への依存度が非常に高く、価格高騰や品薄の影響を受けやすい消耗品の代表格です。
断水時には食器にかぶせて洗い物を減らす「使い捨て食器化」にも使えるので、一定量のローリングストックをしておくと役立つのではないでしょうか。
旭化成 サランラップ
30cm×50mの定番サイズが3本セットになったもので、マイナス60度から140度まで対応する万能選手。
密着性と酸素・水分のブロック性能が高く、「丈夫で切りやすい」という口コミ評価は昔から安定していますよね。
|
|
イワタニ アイラップ
電子レンジ対応の伸縮性食品保存袋で、かぶせるだけで密閉できる便利アイテム。
ラップの消費量をぐっと減らせるのでエコで経済的ですし、袋のまま湯煎調理ができるので災害時の調理にも応用が利きます。
|
|
マスク・手指消毒・手袋
衛生用品の多くは不織布やプラスチックといった石油由来の素材でできているため、ナフサ不足の影響を受けやすいカテゴリになります。
感染症対策だけでなく、粉塵や汚れから身を守るという意味でも、家に常備しておいて損はないかと思います。
cicibella マスク
3Dアクティブタイプの不織布マスクで、耳が痛くなりにくいフィット感が特徴。
個包装なので衛生的に保管でき、日常の花粉対策から非常時の飛沫対策まで幅広くカバーしてくれます。
|
|
サラヤ ハンドラブ VH
指定医薬部外品の手指消毒スプレーで、即効性が高く臭いもマイルド。
物品の消毒にも使えるので、断水で手洗いが難しいときの強い味方になってくれるはず。
|
|
テンカ ニトリル手袋
パウダーフリーで食品衛生法にも適合しているニトリル手袋で、フィット感が良くスマホ操作もできる薄手タイプ。
調理から介護、汚物処理まで多用途に使える定番品ですね。
|
|
エルミン ニトリル手袋
こちらも大容量パックでコスパに優れたニトリル手袋で、破れにくさとフィット感のバランスが良いと評判。
日常の水仕事から非常時まで出番が多く、在庫を回しやすい一品になります。
|
|
ウェットティッシュ・おしりふき
断水時に「お風呂に入れない」というのは、地味ですがメンタルを削ってくる問題ではないでしょうか。
厚手・大容量タイプを確保しておけば、体を拭くだけでもかなりリフレッシュできるので、このカテゴリは思い切って多めに持っておきたいところ。
yasudasg1 大判ウェットティッシュ
厚手の大判サイズで蓋付きタイプ、乾燥しにくく手拭きから体全体の清拭まで対応できます。
肌にやさしい設計なので、敏感肌の方や小さなお子さんがいるご家庭でも落ち着いて使えそうです。
|
|
ドリドリ おしりふき
水分たっぷりの日本製おしりふきで、厚手の大容量パック。
赤ちゃん用と書かれていますが、実際は大人の手口拭きにも十分使えるクオリティで、災害時のオールラウンダーとして役立ってくれます。
|
|
シャンプー・節水用品
光熱費や水道代の高騰に備え、節水シャワーヘッドへの投資は日常の節約と非常時対応を同時に叶えてくれる一手ではないでしょうか。
シャンプーは詰め替え用を中心に、お気に入りのものをキープしておくと良いかもしれません。
Jeri-Jeri シャンプー
日常使いに適したシャンプーで、家族みんなで共有しやすい処方になっています。
詰め替え用を多めに確保しておけば、価格上昇リスクにも落ち着いて対応できそうですね。
|
|
NILE 濃密泡スカルプシャンプー
濃密な泡立ちで洗浄力が高く、頭皮ケアにも適した一本。
泡立ちが良いタイプは少ない水でもすすぎやすいので、水不足のシチュエーションでは地味に助かる特徴になります。
|
|
ミラブル 潤
ウルトラファインバブルのシャワーヘッドで、約40〜50%の節水効果があるとされています。
日常の水道代節約と、給水制限時の貴重な水を有効活用するという両面で、長期的に元が取れる買い物といえるかもしれません。
|
|
AURA-TEC ピュアブルII
マイクロナノバブルのシャワーヘッドで、5段階のモード切り替えができる優れもの。
頭皮や肌へのやさしさと洗浄力のバランスが良く、家計にも非常時にもじわじわ効いてくる一台です。
|
|
コンタクトレンズ
視力の確保は、安全に行動するための大前提ですよね。
レンズもケア用品もプラスチックや包装材を使うので、供給不安の影響を受ける可能性があります。
数ヶ月分を前倒しで確保しておくと落ち着いて過ごせるかと思います。
メニコン 2week プレミオ
酸素透過性が高く、長時間つけていても瞳が乾きにくい2週間使い捨てタイプ。
コストを抑えつつ数ヶ月分のストックを回しやすいのが、この手のレンズのいいところですね。
|
|
シード 1day Fine UV plus
1日使い捨てでケア用品が不要、UVカット機能もついた便利なタイプ。
水が使いにくい環境でも衛生的に使えるので、非常時の選択肢としても心強い存在になってくれるのではないでしょうか。
|
|
サプリメント・プロテイン
流通が不安定になると、食事のバランスがどうしても偏りがちになります。
「飲む備蓄」として粉末やタブレットタイプを持っておくと、体調維持の保険として効いてくるのかもしれません。
ブレイズエナジー
エネルギー補給に特化したサプリで、疲労回復や活力維持をサポートしてくれます。
コンパクトなので収納場所を選ばず、日常の元気チャージから非常時まで幅広く使える一品。
|
|
EX BOOST
パフォーマンス向上を目的としたサプリで、栄養バランスの乱れを補う目的にもフィットします。
タブレットタイプなのでローリングストックしやすいのが魅力ですね。
|
|
メタボリック イースト×エンザイム ダイエット
酵素とイーストを配合したサポートサプリで、消化や代謝を助けてくれます。
非常時のどうしても偏りがちな食事でも、体調維持の一助になってくれそうです。
|
|
DNS ホエイプロテイン100
高品質なホエイプロテインの1kgパックで、筋肉維持や免疫力のサポートに役立つアイテム。
水に溶かすだけで手軽に摂れるので、食欲が落ちたときの栄養補給にも使えます。
|
|
DNS ホエイプロテインSP
同じくDNSのプレミアムラインで、吸収効率が高いタイプ。
運動習慣がある方はもちろん、非常時の体力維持の保険としても頼もしい一本ですね。
|
|
まとめ
ここまで、ナフサ不足から始まった建築資材ショックと、個人ができる備えについてお話ししてきました。
改めて振り返ってみると、今回の危機は単なる一時的な値上げではなく、日本という国が長年抱えてきた石油化学依存という構造的な弱さが、中東の一カ所の詰まりで一気に露呈してしまった出来事なのだと感じます。
ニュースで「ガソリンが高い」という話はよく流れますが、その裏側でもっと広い範囲の素材が静かに消え始めている、という事実は意外と知られていないのではないでしょうか。
でも、必要以上に怖がる必要はないと考えられます。
大事なのは、パニックに巻き込まれず、自分のペースで代わりの選択肢を探しておくこと。
塗装やリフォームを考えているなら水性塗料のプランを業者さんに相談してみる、日用品は棚に並んでいる今のうちにネットで少しずつローリングストックを始めてみる、契約書には資材高騰時のルールを一行入れてもらう。
どれも派手さはありませんが、こういう小さな積み重ねが、結局いちばん家族の暮らしを守ってくれるのかもしれません。
状況は日々変わっていきますし、この先どう転ぶかは正直誰にもわかりません。
それでも、情報を持っている人と持っていない人の差は、これからますます開いていくように感じます。
危機をチャンスに変えられるかどうかは、結局のところ一人ひとりの静かな選択にかかっているのではないでしょうか。






